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2年前から法制審議会で検討されていた、共同親権の導入を含む家族法制の見直しについて、昨年11月にようやく中間試案がまとまり、現在は中間試案に対するパブリックコメントが募集(期限は2月17日までとなっています)されています。
今の日本では、離婚後の子の親権は父母どちらかが単独で行使することとされ、親権者を定めなければそもそも離婚すること自体できないという制度になっています。
これに対し、欧米諸国では離婚後も父母が揃って親権を行使するというのが主流らしく、日本でも共同親権の導入の是非について長らく議論がされてきました。
共同親権を導入するのか、するとしてどのような仕組みにするのかまだまだ議論が続く見込みですが、ひとまず本稿では上記の中間試案を概観しつつ、共同親権導入等の法改正が行われた場合に具体的にどのような影響が生じるのか、検討していきます。
まず親権そのものについてみると、上記中間試案では、まず父母の双方が離婚後も子を養育する責務を負い、子の意見も尊重しつつ子の利益を考慮しながら親権を行使するという基本的な考え方が冒頭に示されています。
そして、離婚後の親権については、原則として父母双方を親権者とする案や、原則父母の一方を親権者としつつ協議によって父母双方が親権者になれるとする案、および原則は作らず父母間の協議か裁判で定められるという案が機械的に並べられています。
その上で、親権のうち子の身の回りの世話等をする権利(監護権といいます)と子の財産等を管理する権利について、同様に原則を共同行使とするか父母の一方による行使とするか、協議が整わない場合はどうするかという各パターンの案が提示されております。
一言で言ってしまえば、「まだ具体的なことは何も定まっていない」というのが親権に関する中間試案の現状です。
ただ、離婚した後も父母間の関係がある程度良好に保たれているような場合では、現在の単独親権の制度下でも、子の身の回りの世話なり進学費用等の経済上の世話なりについて父母間である程度意思疎通は図られています。
親権に関する制度を根幹から変えてまで対策すべきは、離婚協議の段階から父母が親権をめぐって激しく争い、養育費が払われないとか面会交流が行われないとか場合によっては子の連れ去りが起きるような、父母間の対立によって子の福祉が害されるような事例です。
このような協議が整わない事例に対応するためにどのような強制力のある制度を設けるかという点が、私も職業柄気になってくるところです。
そこで、中間試案のうち養育費に関する部分を見ていると、離婚協議の段階で養育費の取り決めをしなければ原則として離婚ができないとする案や、養育費について協議が整わない場合は法で定める一定額の養育費請求権を自動的に発生させる案、離婚後に発生した養育費について一般先取特権という優先権を付与するなどして未払養育費の回収を容易にする案等が提示されています。
養育費を支払う方の親に収入や財産がない、または隠されていて発見できない場合にどうするか(なお、「将来的に」という注記つきではありますが、養育費が支払われない場合には支払義務者のマイナンバーと紐付けされた口座を一括して照会できる制度を設ける可能性についても言及されています)等検討すべき事項は多々ありますが、ひとまず養育費が払われない事例に対応するための種々の方策が検討されているようです。
また、面会交流についても、離婚協議の段階で面会交流の取り決めをしなければ原則として離婚ができないとする案のほか、離婚成立前の親子交流や祖父母と子の交流に関する規定を創設する案、面会交流が実施されない場合の方策を「検討する」案等が提示されています。
ただ、面会交流は養育費と違って金銭を確保すれば良いというものではないため、強制力をもって面会交流を行わせることについては慎重論も強く、具体的な方策については「検討する」という記載にとどまっているようです。
したがって、父母間の対立が激しく面会交流が実施できない事例については、今回の法改正による効果は限定的なものにとどまるというのが、現時点での見立てになるでしょう。
養育費や面会交流に関する中間試案の概要は以上のとおりですが、冒頭に記載したとおり中間試案はまだパブリックコメントを募集している段階で、今後も内容が変更される可能性はあります。
また、上に述べた養育費や面会交流に関する事項だけでなく、養子縁組や財産分与、DV・虐待事案への対応等改正の対象となる事項は多岐にわたっており、今後も法改正の行方を見守る必要がありそうです。
ただし、親権に関する法制度がどう変わろうが、離婚に伴う紛争解決において一番大事なのは、事例に応じて子どもを含む当事者にとって最良の解決方法を探っていくことです。
岡野法律事務所では、全国各地でお悩みの皆様にとって最良の解決ができるよう、本年も日々研鑽を続けて参ります。
離婚や親権に関する問題に限らず、お困りの際は是非お近くの岡野法律事務所にご相談下さい。
文責:池上