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昨今も芸能人の不倫報道は昔と変わらず大いにワイドショーを盛り上げているようです。
昔と変わったのは、盛り上がる場所にSNSを中心とするインターネットが加わり、あわせて「炎上」という言葉に新たな意味が一つ追加されたことくらいでしょうか。
この不倫報道について弁護士の視点から検討をするとなると、芸能人のプライバシー権と報道機関の報道の自由の衝突という憲法論的なお堅い切り口から、情報提供者に支払われるであろう謝礼と芸能人の配偶者から情報提供者に請求されるであろう不貞慰謝料の相場の比較という下世話極まりない切り口まであり、実は中々検討しがいのあるテーマの一つであります。
しかしながら、今回はまず初歩的なテーマとして、「不貞」「不倫」「二股」といった言葉の意味から、それらがもつ法的な意味及びそこから発生する法的な効果について検討していきたいと思います。
まずは「不貞」という言葉です。
こちらは週刊誌報道等ではあまりお目にかからない言葉ですが、民法上使用されている言葉であり、弁護士からすると一番馴染みのある言葉になります。
これは法律上夫婦の双方が負うとされている貞操義務に反することを指し、具体的には婚姻関係中にあるにもかかわらず第三者と肉体関係をもったことをいいます。
この「不貞」は離婚の原因となるほか、円満な夫婦関係を侵害された配偶者からは慰謝料の請求をされる原因ともなりえます。
次に「不倫」という言葉です。
こちらは辞書を引くと「人の道を踏み外すこと」といった何とも抽象的な意味が記載されていますが、週刊誌報道等を含めて一般に広く使用されており、主に「不貞」と同じ意味で使われている場合が多いようです。
この「不倫」については、法律上の言葉ではないので裁判等のお堅い場面で目にすることはあまりありません。
また、「二股」や「浮気」という言葉は、結婚相手がいない状態で複数の相手と交際関係を持っている場合にも使用されるという点で「不貞」や「不倫」と区別できますが、この両者に厳密な区別はないようです。
辞書に書いてあるような本来の意味でいえばそれぞれ「先が二つに分かれていること」「浮ついていること」といった意味であり、それとは異なる使い方をされる場合が多いようです。
そして先に書いたとおり、離婚原因や慰謝料の発生原因として法的に問題になるのは、原則は「不貞」です。
婚姻関係がなければ浮気をしようと何股をかけようと関知しない、というのが現行民法の基本的な立場なのです。
また、婚姻関係があったとしても、肉体関係を伴わないただの親密な関係に留まる場合も同様です(どこまでが「ただの親密な関係に留まる」といえるかは別途検討が必要ですが)。
したがって、たとえ芸能人が10年間交際を続けた相手と別れようが、結婚発表直後に週刊誌に交際相手との離別の事実をすっぱ抜かれようが、盛り上がるのはワイドショーとSNSだけであって、法律上は何がどうなるものでもないということになります。
しかしながら、婚姻関係がなかったとしても、「浮気」をしたりすると法的な問題が生じる場合があります。
それはいわゆる内縁関係が存在する場合です。
内縁とは、戸籍上は夫婦となっていないものの実質的には夫婦関係と同様の密接な関係が存在する状態を指します。
結婚はしたいが連れ子の名字を変えたくない、今まで使ってきた自分の名字も変えたくない、パートナーが同性で法律上入籍ができない等、様々な事情で戸籍を入れていない方々について、この内縁関係が認められる場合があります。
内縁関係が認められる場合、相続を除いた多くの場面で夫婦関係があるのと同じ効果が発生し、「貞操義務」や「不貞」という概念も発生します。
したがって、仮に「不貞」があった場合には、円満な内縁関係が破壊されたとして慰謝料の請求が認められる場合があります。
また、本稿のテーマからは少し外れますが、婚姻に至らない交際関係しかなくても、「婚約」がされているのに一方的に婚約が破棄された場合は、婚約破棄を理由とした慰謝料請求が認められる場合もあります。
単なる交際関係であっても、その関係の深さによっては法的保護が及び、それを侵害する行為は法的にも非難されるのです。
以上長々と書き連ねましたが、端的にまとめると、基本的に「不貞」でない限りは法律上問題になることはありませんが、例外もあるのでまあ日頃から気をつけて行動しましょうということになります。
著名な芸能人でもなければ、世間を巻き込んで仕事や日常生活にまで差し障りが出るほどの大きな問題にはなりにくいですが、当然倫理的な非難は避けられません。
また、何より浮気がバレてしまった際の修羅場によって生じる精神的な負担は相当なものがあるやに先輩弁護士から伺ったこともあります。
まずは人の道に悖ることのないよう、節度を守って日々の暮らしを楽しみましょう。
もちろん、人である以上過ちを犯してしまうことや、それによって被害を受けることは当然あります。
弁護士は強力な守秘義務を負っており、相談内容が他所にすっぱ抜かれるようなことは万が一にもございませんので、お困りの際は安心してお近くの法律事務所にご相談下さい。
文責 弁護士 池上天空