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新型コロナウイルス対策をめぐって発生した訴訟について弁護士が解説

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日本で初めて新型コロナウイルスの国内感染例が出てから早くも4年目を迎えました。

その節目となるタイミングで、日本政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類を「5類」に引き下げるという発表をしました。

具体的には、新型コロナもインフルエンザ等と同じ扱いにするということで、マスク着用は屋内外問わず個人の判断となり(この部分については3月13日から適用される予定です)、診療についても段階的に全ての医療機関で受けられるようになります(なお、施設の判断でマスク着用を求められたり、医療機関の判断で診療不可との判断がされたりすることは当然ありえます)。

こうなってくると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発生する様々な法的トラブルについても、今後は徐々に終息してくる可能性が高そうです。

ところが、新型コロナ発生後比較的早い時期に国や都道府県を相手取って起こされた訴訟の判決が、最近になって相次いで下されています。

事件自体は2~3年前に発生したとしても、やはり提訴までの交渉や裁判での審理に時間がかかってしまうのでしょう。

その結果、裁判所の判断が下されるころには、トラブルの元となった新型コロナ対策のための規制が撤廃されつつあるというのは、なんとも皮肉なことです。

ただ、今後同様の感染症が発生したときや、再度新型コロナウイルスが変性してさらなる感染拡大が起き、再度種々の規制が強化された場合には、今回の紛争事例を踏まえてよりよい対応を検討する必要があります。

そこで、本稿では新型コロナウイルス対策をめぐって発生した訴訟のうち、最近判決が下された事例をいくつか概観していきます。

まず、徳島県のラーメン店が、新型コロナウイルスの感染者が立ち寄ったとして店名を公表した県の対応は違法だとして、県に対して損害賠償をもとめて提訴した件について、先日徳島地裁で請求棄却の判決が下されました(本稿執筆時点では、原告が控訴したとの発表がされています)。

本件のように行政機関が事業者等の名称を公表することは多くあり、例えば食中毒が発生した店舗に対する営業停止処分のような強力な行政処分よりは、むしろ穏当な対応と位置づけられます。

ただ、本件で公表がされた2020年7月当時は新型コロナ発生後まだ半年程度で、感染者発生に伴う風評被害の類が強く存在した時期であり、通常の公表と比べて客の減少等の不利益はかなり大きかったといえるでしょう。

また、本件では感染者がたまたまラーメン店に立ち寄ったというだけで、ラーメン店自体には何の過失もないという点で、通常の公表事例とは一線を画します。

そこで今回の事件に対する裁判所の判断に注目が集まったのですが、徳島地裁は感染者の急増等の当時の状況からすれば公表の必要性・緊急性は高く、目的も正当であったとして、県の対応を支持する判決を下しています。

確かに、仮に感染者の発生等を自治体側が一切公表せずに感染が拡大したような場合には、かえって自治体側の責任が問われる事態にもなりそうで、最終的な判断は中々悩ましいものといえそうです。

また、東京都が発出した飲食店に対する時短命令の是非について、昨年相次いで二つの判決が下されました。

まず2021年3月18日から21日までの4日間の時短命令は違法だとして、飲食店が東京都に対して損害賠償を求めて提訴した事件について、東京地裁は処分に関する都の過失を否定して損害賠償請求は棄却したものの、時短命令は違法との判断を下しました(この件も原告が控訴しましたが後日取下げられ、地裁の判決が確定しています)。

膨大な数の飲食店がある東京都において、原告が運営する店舗を含む27店舗に対して4日間の時短営業を命じたところでその効果は極めて小さく、違反した場合に過料が科されるような強力な命令を出す必要性はないとの判断がされたのです。

他方、同じ飲食店に対して、同年5月18日からと27日からの時短命令および酒類提供禁止命令に従わなかったことで、裁判所が課した計780万円の過料決定について、飲食店の不服申立を棄却する決定を最高裁が下しました。

過料というのは刑事罰ではなく、非訟事件という特殊な手続で決定されるため通常の訴訟事件と同一視はできませんし、この二つの事件で問題になった命令は一応別々の命令ではあります。

ただ、近接する時期に同一の飲食店に対して下された同種の命令について、一方は違法とされ他方はその効力が否定されず命令違反による罰則が正当とされるというのは、感覚としては何とも不思議なところです。

ここで紹介した事件以外にもまだまだ係争中の案件は多くあり、現時点で公表処分や時短命令の是非について一概に論じることは難しいです。

ただ、万が一再びコロナ禍のような状況が生じた場合には、今回のような裁判例が参照される可能性は高いので、各種裁判例や事件当時の社会情勢、およびその時々の状況を踏まえて、営業の是非や各種命令等への対応を検討する必要があります。

岡野法律事務所では、全国各地に本支店を配し、東京でも四国でも九州・沖縄でも、皆様のご相談にお答えするとともに多数の解決例を蓄積・共有しております。

お困りの際は是非お近くの岡野法律事務所にご相談下さい。

文責:池上

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